そう・・・いつも・・・

女も２８歳にもなれば、人を好きになった経験も
片手じゃ納まらないだろう。

親だからって、全ての相手を知ってるわけじゃない。
なんとなく・・・好きな人がいるな。
そういう感じは不思議なもので、なんとなく解る。

女友達と会う・・・そう言って出掛けて行ったとしても、
なんとなく・・・違うんじゃないかな。
そういう嘘も不思議なもので、なんとなく解る。

私も一度や二度・・・いや・・・もっと・・・
似たような嘘を言って、母を騙した事もある。

そんな経験・・・多かれ少なかれ誰しもあるのじゃない
だろうか？

本当に女友達と会っていたのに・・・嘘なんかついてない。

彼女はそう言うかもしれない・・・
「下衆の勘繰り」だったとしたら詫びもしよう。

男友達と会うのは禁止。

などという、今時、深窓の令嬢じゃあるまいし野暮な事は
言うつもりもない。
もしも、彼女がそういう嘘を言わなければならないとしたら
言えない理由があるはず・・・

「男友達と遊びに行く。そう言ったら、嫌味の一つや二つじゃ
すみそうにない。」
「あっ！母さんと出掛ける約束してたっけ！」

そんなところかもしれないけど・・・

今まで「彼」を家に連れてきた事など一度もなかった。
ところが、今回は交際し始めて数日後には連れてきた
のである。

「これは本気らしいぞ・・・」

育った境遇に問題はあるようだが彼自身のせいでは
ないのだし、うちも大層な事を言えるような境遇ではない
のだし・・・
これからの付き合いの過程と、もしかして、ふたりの生活
が始まるような結末になった時に
「問題のない境遇」
になるよう築いていけばいいのだから・・・

５年ほど前に交際していた彼の時の事・・・
彼と家族（私と祖母）との板ばさみになり、苦しんだと思う
彼女。

祖母の病気が発覚し、私も心身ともにダウン寸前だったし
彼は「俺が一番」な人だったから、娘の立場など理解する
ほど懐の大きな人間ではなかったらしい。

彼の部屋の掃除をしたり、洗濯をしたり、料理をしたり・・・
時には泊まる日もあった。

帰って来るのか？来ないのか？
心配している私に向かって、母は・・・
「娘が泊まってきても、どこで何をしているか気にならないの。」
と、無神経にも追い討ちをかけてくる。

そんな繰り返しばかりの毎日で、私のイライラは募り彼女の顔を
見るたびに嫌味を並べる。
「アテにされたくないのなら、彼の所へ行ったらいいじゃないの！」
そんな事も言ってみたりした・・・

仕事も・・・彼の事も・・・一生懸命になり過ぎるあまり、彼女は
疲れて帰って来る。
そこへ私の嫌味が・・・止めを刺す。

そして・・・今回の彼ともまた・・・

夜勤で私がいない時に、彼を家に誘い食事を作っている。
それは許した事だから良し・・・としよう。
が、朝まで彼と過ごしたとしたら・・・話しは別。

彼女のメールの返信をするが・・・無しのツブテ。
「まだ、彼がいるな・・・」
見ているわけじゃないのだから、メールできないのは彼へ気兼ね
しての事だろう。
そう考えるのが普通じゃない？

ところが・・・ようやく来た返事が・・・

「明日も仕事なんだから寝てます。
 彼が来た事も連絡したよね。
 彼が帰った事まで報告しなくちゃならないわけ？
 中途半端に理解あるふりしないで。
 心配するのと干渉し過ぎなのとは違うんでないの？」

そう来るか・・・

こんな事なら私が夜勤の時に連れて来るな。
そう最初から言っておけばよかった・・・と悔やんでも遅し・・・

彼女に偉そうな事を言えるような恋をしていないけど、
だから・・・お互いさまって事なのか・・・
それとも何？
彼女に対して正々堂々と「私は親よ。」と胸張って言える
ような道を歩いてない事が理由なのか・・・

なんでよ・・・彼女の幸せを誰よりも願っているつもり・・・
なのに。
なんで、こうなるのよ！